前回、広い意味での原価管理には、3つの段階があるという話をしました。今回は、その第1段階である原価計算について、その目的を含めて考えていきたいと思います。
原価計算とは、製品の製造に必要な原価の把握のこと、つまり自社が販売しているものを一体いくらで作れているのかを把握することで、会社の経営にとって必要不可欠な情報です。しかし、例えば、「材料や購入部品はみんながバラバラに倉庫から持って出るため、何にどれだけ使ったかわからない」、「手作業のため1つひとつの製品にばらつきが大きい」など、実際にかかった原価の把握といっても、非常に苦労されるケースが多いように思います。そのため、これらの場合には、仕入先からの請求書が届いてから初めて、その月の材料費がトータルでいくらかかったかを把握している企業が多いのが実情です。それでは経営に必要な情報として遅すぎるばかりか、トータルという大雑把な把握では経営判断が困難となってしまうのではないでしょうか?
また、原価計算といっても、「実際にいくらかかったか」ではなく、「これくらいでできるだろう!?」という理論値×数量で原価計算としている企業もあります。 この「これくらいでできるだろう!?」という理論値で計算することを標準原価計算といいます。もちろんきちんとした根拠に基づいて、例えば「これくらいは失敗するだろう」という予測も含めて計算する必要があります。しかし、まず必要なのは、やはり「実際にいくらかかったか」という実際原価計算で、これがわからなければ、どこに無駄があるのか、その無駄をどのように削減するかの対策を考えることもできません。これをタイムリーに、そして必要な単位(例えば、製品種類別、更には担当者別等)で把握することが原価管理の第1ステップです。これには、徹底した管理意識とその仕組みが必要になりますますので、次回はそのポイントを考えていきたいと思います。