前回は、間接作業を無くすことで生産性を上げた事例をご紹介しました。
今回は、工場のボトルネックについて考えてみましょう。
■ボトルネックとは
X社の工場では、A→B→C→Dの4つの工程で製品Xを生産しています。そ
れぞれの工程の1時間当たりの生産能力が以下のとおりだとすると、生産能力
が最も低いC工程がこの工場のボトルネックとなります。
+————+—————-+—————-+—————-+—————–+
| 工程 | A工程 → B工程 → C工程 → D工程 |
+————+—————-+—————-+—————-+—————–+
|生産能力|50個/時間|30個/時間|20個/時間 | 40個/時間|
+————+—————-+—————-+—————-+—————–+
ボトルネックとは、「全体の結果や性能を左右する最大の要因」と定義され、生
産工場では、最も能力の低い工程がそれに当たります。この工場では、A、B、
Dの工程がいくら頑張っても、1時間に20個以上の製品を「完成」させること
ができないことがわかります。つまり、「工場の能力はボトルネックで決まる」
のです。
■ボトルネックの本当の意味
このようなことから「ボトルネック」を管理して能力を最大化させることの重
要性が広く知られています。しかし、きちんと実行できている工場は多くあり
ません。
ひとつの理由は、現実の工場では本当のボトルネックを特定することが困難だ
からです。上の例では製品Xだけを生産しているので、簡単にボトルネックを
特定することができましたが、実際にはこのように単純ではありません。一般
的な工場では、多種多様な製品を作っています。製品によって関わる工程やそ
こでの生産時間が異なりますから、ボトルネックが分かりにくくなります。そ
の結果、工場では、どの工程も忙しくて能力が不足しているように見えます。
また、高価な設備を使う工程や技術的に高度な処理をする工程などを管理者が
ボトルネックだと思い込んでいる、ということがあります。高価な設備で処理
する数量を増やすことで原価を下げることができると考えているからです。と
ころが、いくら高価な設備での生産数を増やしても、製品が完成しなければ販
売することはできません。「工場全体の能力がボトルネックで決まる」というこ
とは「製品の原価もボトルネックの能力で決まる」のです。
さらに、ボトルネックの能力は本来、もっと高いのにそれが発揮できていない
こともあります。
上の例で説明すると、現在、A工程が都合の良い順番で製品を生産して、その
まま後工程に流すと生産能力は表のようになっているとします。しかし、C工
程の都合の良い順番で生産すると、各工程の能力が変わる場合があります。仮
に、C工程の都合の良い順番で生産することで、C工程での準備や段取替時間
を減らすことができ、生産能力を20個/時間から25個/時間に上げることが
できるとします。
そうであれば、C工程の都合に合わせて生産順番を変更することで、A工程の
能力が50個/時間から40個/時間に低下するとしても、生産順番の変更を検
討するべきなのです。C工程の能力向上に伴って工場全体の生産能力が「20個
/時間」から「25個/時間」に向上するからです。
工場のボトルネックを発見すると、すぐに設備補強や増員によってボトルネッ
クの能力を向上させようとする工場もありますが、その前に、活用されていな
い能力を発揮させることが大切なのです。
次回は、「ボトルネック」を見つけて改善につなげる手順について解説いたしま
す。
執筆者:
澤田兼一郎(中小企業診断士)、犬飼あゆみ(中小企業診断士)
執筆者ご紹介 →
http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/
アドバイザー:
MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 阿部守先生