前回は、外注管理で大切なことを考えてみました。
今回は、外注先の協力体制を構築してクレームを減らしたA社の事例を
ご紹介します。
■A社の概要
A社は外壁建材製造会社です。工場で生産した基材を外注先に出荷し、
外注先で塗装と加工を行ってハウスメーカーに納入しています。
ハウスメーカーからA社には、住宅の1棟単位でオーダーがきます。
住宅工事の現場では、外壁を取付けるだけで工事が進むように、住宅の
設計に合わせて、加工済の外壁建材をパーツとして納入するのです。
住宅のモデル(種類)によって外壁の柄や色が異なるだけでなく、
住宅の大きさや形が個々で異なるため、オーダーの内容は千差万別です。
A社から外注先に出荷する基材は、100種類程度ですが、外注先で加工する
最終的な商品の種類は、数万種類と膨大な数になります。
A社は、第9回・第10回でもご紹介した企業ですので、読者の皆さんも
覚えておられると思います。
■不良の内容
Mさんは、A社の外注管理担当者です。元々は営業担当者ですが、外注先
での不良発生が頻発していたため、外注管理を強化することになり、
営業と外注管理を兼務することになりました。
A社の外注先T社で塗装と加工を行った外壁製品は、ハウスメーカーに
納入され、パネルに組み立てられた後、1棟分のパーツとして現場に
配送されます。
ところが、加工した製品の寸法に誤りがあると、他のパネル部品と寸法が
合わずに、ハウスメーカーでパネルを組み立てることができません。
納品した製品に欠けや割れの不良があっても同様にパネルを組み立てること
ができません。
また、外壁製品には柄が入っていますが、製品の外形寸法が正しくても、
切り出した柄の位置がずれていることがあります。そうすると、パネルの組み
立て時には異常に気づきませんが、現場で建物に取り付けた際に、上下左右に
隣接するパネルと、柄が合わないことになります。したがって、大至急生産
して現場に配送しなければなりません。
このような不良によってクレームが生じることがありました。
外注先T社では、作業者が作業指示書を見ながら手作業で寸法を入力して
切断加工をしています。建物の屋根近くの外壁には△形のパーツがあります
し、窓の横には凸型や凹型の形状になることもあります。柄の位置も指定が
ありますから、加工は非常に複雑です。たまに寸法不良が発生することも
やむを得ないという雰囲気もありました。
■外注管理担当者の悩み
もちろんこのような不良が発生すると、ハウスメーカーの工場からA社に
連絡がありますから、すぐに代わりの製品を作って持ち込みます。
そして、このような不良が何回か発生すると、ハウスメーカーの品質管理課
からは、異常報告書が送られてきます。そうすると、原因を究明して対策を
行って報告をしなければなりません。
そうすると、外注管理担当者のMさんは、外注先T社に赴いて社長と現場の
管理者に「不良が続いています」「不良を減らしてください」とお願いしま
す。もちろん、外注先の社長も「もっと注意して作業するようにします」と
応えてくれますから、経験の浅いMさんは、言われるまま、異常報告書に
「検査を強化します」と書いて提出していました。
ところが、不良の真の原因をつかんでいませんから効果的な対策もできて
いません。注意して作業するのも不良発生の直後だけですから、忙しくなると
また不良が発生します。
とうとう、ハウスメーカーからは「不良の原因は何ですか」「検査は対策では
ありません」「原因に対して対策を行ってください」と報告書を突き返される
ようになり、Mさんは困ってしまいました。
再び外注先T社に行って相談をしますが、「そう言われても・・・、
私たちにはそれ以上できません」としか答えてくれません。
困ったMさんは、現場に入って作業を観察し、「このやり方をこうしたら
どうだろうか」「ここをこう変えたらどうだろうか」と考えて提案するように
しましたが、外注先のT社長から「そんなことをやっていたら生産が遅れる」
と一蹴されてしまいました。
当時は、注文が右肩上がりに増え続け、残業の連続で生産を続ける外注先
T社に頼らなければ、製品を納期に間に合わせることができない状況でも
ありました。
解決できない問題を抱えたMさんは、会社に行くのも嫌になりかけていま
した。
しかし、このように悩み続けるMさんに、ようやく大きな転機が訪れます。
次回は、外注先T社との協力体制をどのように構築したかをご紹介します。
執筆者:
澤田兼一郎(中小企業診断士)、犬飼あゆみ(中小企業診断士)
執筆者ご紹介 →
http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/
アドバイザー:
MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 阿部守先生