前回は、外注先の協力体制を構築してクレームを減らしたA社の事例を
ご紹介しました。
今回は、現場観察の重要性について考えてみましょう。
■改善のポイントは「本当の問題」を見つけること生産現場における
改善では、生産性やサービスの向上を目指して仕事の手順ややり方を
変えていきます。
改善の手順としては、まず「問題」を見つけ、そして「どのように変える
か」という解決策を考えることになります。では、「問題」はどのように
して見つければ良いのでしょうか。
「問題がないのが問題だ」という言葉がありますが、現場で意見を聞く
と、問題があるにもかかわらず「問題はありません」という反応になる
ことがあります。長年、同じ業務を継続していると、これまでの状況や
作業方法が当たり前となり、「問題に気づかない」ようになってしまう
ことが多いためです。
「問題」とは、現状とあるべき姿とのギャップですから、生産性などの
データを分析すれば、どこが目標に達していないかは見つけることが
できます。しかし、これは「結果として表れている問題」です。
この問題を解決するためには、その裏にある「本当の問題」を見つけ
なければならないのです。
■現場観察の重要性
改善活動において難しいのが、この「本当の問題」を見つけることです。
データを分析するだけでは、「本当の問題」は分からないからです。
そこで重要なのが現場の観察です。現場を観察する際には、「なぜ
このようにしているのか」「なぜこうなっているのか」を考えながら
冷静に観察することが大切です。先入観を持たずにじっくりと現場を
観察することで、無駄な作業や動作、手待ち、トラブルの種などを
感じることができるのです。
しかし、それですぐに「本当の問題」が特定できる訳ではありません。
観察できるのは、目の前の現象であり事実だけです。そこで、「これが
本当の問題かな?」と感じたことをデータに取り、そして分析し、
さらにあるべき姿を描いてみます。このように問題意識を明確にした
上で、再度観察することで、「本当の問題」が見えてくるのです。
■現場観察の工夫
現場を観察する時は、単に目で見るだけでなく、写真やビデオで撮影
することも効果的です。現場を離れてから落ち着いて見直すと新たな
発見があったり、ビデオ撮影をすれば、仕事の流れを再確認したり
作業時間の測定も行いやすくなります。さらに、自分で実際に作業を
行ってみることで問題に気づくこともあります。
■問題発見力を高めるために
「本当の問題」を見つける力を高めるためには、多くの現場を見る
こと、そして「何が問題か」を考えることの経験の積み重ねが重要です。
一見、問題のなさそうな現場でも「問題がない」ことはありません。
「現場は問題の宝庫」です。先入観を取り払って「何が問題か?」を
冷静に観察してみましょう。
次回は、生産現場の観察で問題を見つけたZ社の事例をご紹介します。
執筆者:
澤田兼一郎(中小企業診断士)、犬飼あゆみ(中小企業診断士)
執筆者ご紹介 →
http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/
アドバイザー:
MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 阿部守先生