前回は、現場に任せて5S活動を定着させたKS社の事例をご紹介しました。
今回は、連載のまとめとして生産管理を実践するためのポイントについて
考えてみましょう。
これまでの連載で、生産管理を実践するために、問題の見つけ方と解決の
方法を事例でご紹介してきました。
■実践時に発生しやすい問題
コンサルティングの現場では、「話は分かるけど、ウチではできない。」
という声を良く伺います。
現場の方は実は問題を良く分かっておられ、原因も掴んでおられることが
多いものです。そして、対策のアイデアもお持ちです。
でも「現実には難しい」となることが多いのです。
それは、対策を行いたけど、「お金が・・・」、「人が・・・」、
「場所が・・・」、「協力者が・・・」といったように、対策を実行するのに
乗り越えなければならない抵抗や障害があるからです。
逆に言うと、だからこれまでその問題が解決されないままであった、とも
言えます。みなさんの工場でも同じようなことがあるのではないでしょうか。
生産管理を実践して生産性の向上につなげるためには、原因と対策を見つ
けるだけでなく、このような障害を取り除いて、実行の環境を整えることが
大切なのです。
■実践のポイント
この実行の環境を整えるポイントとなるのが、現場でのコミュニケーションと
リーダーの決断です。
(1)コミュニケーション
一人で頑張るのではなく、みんなで取り組むことが解決への近道です。
・会議などを通じで問題や解決策への共通認識をつくります。
・解決方法の実施に当たって、障害がないか、また他業務への
悪影響が無いかを検討して、あれば、その対策も確認します。
(2)決断
そして、問題の解決に向けてリーダーをはじめとする関係者が本気である
ことを確認します。
この2つを行うためには、問題が解決されないことの損失と解決策がもたらす
良い状態のイメージをきちんと説明して共有してもらうことが大切です。
このようにして生産管理を実践して少しでも効果が出てくれば、協力者が
増えて活動に弾みがつきます。
前回、5Sを定着させたKS社の事例をご紹介しましたが、社長が実行を
決断してプロジェクトを結成し、さらに勉強会で共通認識を図りました。
そして、時間内に5S活動の時間を確保する、設備投資も実施するなど、
本気であることを示しました。
その結果、全員が本気で取り組むことにつながり、成果が出て活動に
弾みがついたのです。
どんな時代でも、問題の先送りは企業に悪影響を与えるだけで良い結果を
もたらすことはありません。どんな現場にも障害はありますが、できる
ことから着実に取り組んでいきましょう。
今回の連載が、皆様の生産管理の実践に少しでもお役にたち、品質・コスト・
納期のレベルアップにつながれば、望外の喜びです。
執筆者:
澤田兼一郎(中小企業診断士)、犬飼あゆみ(中小企業診断士)
執筆者ご紹介 →
http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/
アドバイザー:
MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 阿部守先生