前回は、A社の概要と売上予測の改善事例について解説をしました。
今回は、生産数量を決める考え方をご紹介します。
■生産計画の検討
内示情報を生かして確度の高い売上予測ができるようになったBさんは、
生産数量を決めるために次のように考えました。
・まず、売上予測から翌月・翌々月の出荷数量を見込み、在庫数量と
対比して翌月の生産数量を算出します。
・A社の工場では多くの品種をロット生産しているため、次の生産品が
入庫されるまでの間、出荷に対応できる在庫を常に持っていなければなりま
せん。
・月に1回の生産を行う場合は、すべての品種について、月末時点で翌月
使用する分の在庫(1か月分)があれば良いことになります。
・ところが、ぎりぎりのやりくりを行ってきたA社では、月末に1か月分の
在庫を持とうとすると、現状より在庫数を大幅に増やさなければなりません。
これでは、在庫のアンバランスをなくして欠品を防ぐという、当初の目的が
達成できません。
・月に2回の生産を行う場合は、月末に翌月の前半に使用する分の在庫
(0.5か月分)があれば良いことになります。
しかし、この方法ではロットの小さくなる品種が多く発生し、工場での
ジョブチェンジも多くなります。その結果、工場での生産効率が大きく
低下してしまうのです。
次の問題にぶつかってしまいました。
■ABC分析の活用
そこで、Bさんは、生産している全品種について、出荷数量でのABC
分析を行ってみました。全100品種のうち、毎月の出荷量の多い上位20
品種をA、次の30品種をB、出荷の少ない50品種をCとしました。
そして、A・B・Cに分けて月間の生産回数と目標在庫レベルを変える
ことにしたのです。
一般的な考え方では、出荷の少ない品種は在庫を少なくしようとしま
すが、そうすると小ロットでの生産を繰り返さなければならなくなり
ます。また、多く出荷される品種の在庫を多くすると在庫数がとても
多くなってしまいます。
そこで、Bさんは、A品目については月2回の生産として在庫目標を
0.7か月分、B品目については、月1回の生産で在庫目標を1.5か月分、
C品目については1.5か月に1回の生産で在庫目標を2.0か月分としま
した。
出荷数量の多い品種は限られていることと、月2回に分けて生産しても
ロットの大きさが大きいので、工場でのジョブチェンジの負担は大きく
ありません。出荷数量の少ない品種は、在庫を2か月分持ったとしても、
全体の在庫数量への影響は軽微です。しかも、1.5か月に1回の生産と
することでロットの大きさが大きくなりますから工場の生産効率も上が
ります。
■A社の生産計画の方法と成果
このようにして在庫レベルを設定することがでたので、基本的には使った
分だけを補充する方式としながら、売上予測も活用して生産数の微調整を
行う生産計画方法としました。
そして、ABC分析の考え方を取り入れたことで、従来よりも全体の在庫
数を20%削減し、しかも欠品の危険を無くすことができました。
Bさんは、目標であった、在庫のアンバランスを無くして解決することが
でき、しかも、ルールを明確にするすることで、だれでも生産計画を作成
することができるようになりました。
みなさんの工場では、生産計画のルールは決まっていますか。
次回は、「外注管理で大切なこと」について考えてみましょう。
執筆者:
澤田兼一郎(中小企業診断士)、犬飼あゆみ(中小企業診断士)
執筆者ご紹介 →
http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/
アドバイザー:
MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 阿部守先生