第15回 生産工程の時間測定で問題を見つけたZ社の取り組み

前回は、現場観察の重要性について考えてみました。
今回は、生産工程の時間測定で問題を見つけたZ社の事例をご紹介します。

■Z社の概要
Z社は建設資材メーカーです。顧客の注文に応じてオーダーメードで
コンクリート製の資材を生産しています。生産工程は、(1)型枠組立、
(2)部材セット、(3)鉄筋セット、(4)コンクリート成形、(5)乾燥、
(6)脱型の順番です。

各工程は、ライン上を循環するテーブルの上で行われます。つまり、
テーブルがライン上を移動しながら、生産が進みます。(1)~(6)の
各工程にテーブルが配置され、その上で各工程の作業が行われます。
各工程の作業が終わると、6つのテーブルが同時に1工程ずつ次に進む
生産方式です。早く作業が終わった工程があっても、作業中の工程が
あれば、テーブルは、次の工程に進むことができません。

(6)脱型を終えたテーブルは、(1)型枠組立に進み循環するようになって
います。テーブルは非常に大きいので、型枠組立では、複数の製品が
生産できるように行います。

Z社の工場に赴任した新工場長は、工程の流れと作業者の動きを見て、
工場の生産性が低いのではないか、と感じました。しかし、どこを
どのように改善すれば良いかすぐには判断ができませんでした。
また、現場の作業者に改善の指示をするにしても根拠を示すことが
必要だと感じていました。
そこで、まず、工程毎の作業時間測定を行ってみました。

■時間測定の結果
時間測定をしてみると、工程毎の作業負荷のバラツキが大きく、作業者の
待ち時間が多く発生していることが分かりました。テーブルのセットが
完了してから各工程の作業が終わり、1工程進むまでの間の実作業時間
割合は、(3)鉄筋セットが85%であるのに対して、(1)型枠組立は
50%でした。ほとんどの場合、(3)鉄筋セットの工程が終わるのを待って
から、全体が1工程進むことになっていました。そして、(1)型枠組立
工程の作業者は平均して半分が手待ち時間になっていたのです。

そこで、工場長は、各工程の作業者の人数を作業負荷に合わせて調整しま
した。そして、常に他の工程を見ながら、相互に応援をする体制にしまし
た。その結果、工程間の負荷バランスが取れるようになり、すべての
作業者がほぼ80%の実作業時間割合となりました。

さらに次の問題として、テーブル上ではもっと多くの製品が生産できるにも
かかわらず、これまでは、テーブルの回転数を高めようとして、少量の
製品しか生産していなかったことが分かりました。テーブル上に余裕の
スペースが残されていたのです。

工場長は、この部分も改善できると考え、テーブルの面積いっぱいに
製品を生産できるように、型枠組立の方法を変更しました。その結果、
各工程での作業時間が伸びたため、テーブルの回転数は、少なくなりまし
たが、生産数数量を多くすることができました。このような改善の結果、
生産性が約30%向上したのです。

現場の観察は改善の基本ですが、気になることが見つかれば、実際に
時間測定などを行って、問題を定量的に把握することが大切です。
そうすることで、関係者に問題の存在を納得させることができ、
改善への協力を得ることができます。さらに、改善した場合の効果を
予測することもできます。

現場を観察して、問題があるかな、と感じたら時間測定を行ってみま
しょう。改善のヒントが見つかるはずです。

次回は、「5S活動の取り組み方」について考えてみましょう。

執筆者:
澤田兼一郎(中小企業診断士)、犬飼あゆみ(中小企業診断士)
執筆者ご紹介 → 
http://ct.mgrp.jp/staff/sawada/
http://ct.mgrp.jp/staff/inukai/

アドバイザー:
MABコンサルティング 中小企業診断士/一級建築士 阿部守先生

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